でないとみなすものではない点等を考慮すれば、労働者が電子メールを受信するなどで内容を知っている以上、電子 メールによる解雇通知も解雇事由等を書面で通知するよう規定した労働基準法第27条の立法趣旨を傷つけない 範囲内で具体的な事案によって書面による解雇通知として有効であると見なければならない場合がある。上のような 大法院の論理は遺言にも適用可能であろう。 第二に、「自署」の要件について スマートフォンやタブレットの電子ペンを利用して電子機器に自筆で遺言の全文と作成年月日、住所、遺言者の 氏名を記載したものを民法第 1066 条による「自著」とみなすことができるかである。これについて「タッチスクリーンによ る自書もその真正性と終局性に疑問が生じざるを得ず、容易に認めることは難しいだろう」としながら「自書」要件を厳 格に解釈する見解11がある。 しかし、自筆証書遺言の核心は遺言者が自筆で遺言書を作成することにあり、筆跡を通じて作成者の同一性を 判別できれば十分なため、実際遺言の作成に使われた筆記具が何かは遺言の効力に何の関係もない。民法第 1066 条の文言や解釈上からも筆記具の種類や材質について何らかの制限を設けたものとみなすことはできない。 問題は電子ペンで作成された文書を通じて遺言者の同一性を確認することができるかという点だ。しかし、電子機 器に記載または署名することが個人を識別する役割としての自筆性が認められ、広範囲に使用されているだけでなく、 遺言者が作成した他の電子文書との照合により筆跡の同一性を判別できる以上、遺言者の同一性を確認するのに 大きな問題はないとみられる。 第三に、「捺印」の要件について 遺言者が自身の印章を伝統的方式により捺印した後、スキャンなどによりイメージ形態に転換し電子的形態で作 成された遺言状に挿入したものを民法第1066 条にともなう「捺印」と見ることができるかが問題になる。これに関連し て、電子署名法第3 条第1 項は「電子署名は電子的形態であるという理由だけで署名、署名捺印または記名押 印としての効力が否認されない。」と宣言しているだけで、電子署名で直ちに「署名捺印」または「記名押印」の効力 を発生するためには、別途法律の規定や当事者間の約定が必要である(同法第3 条第2 項)。 ところが遺言に関 しては捺印要件を電子署名に代えるための別途の法律規定がなく、性質上約定が存在できない。したがって、電子 署名とは別に捺印要件を備えることが要求される。 ところで文書が電子的に保存されている状態で伝統的方式による捺印をすることは物理的に不可能なので、この 時捺印要件は捺印イメージファイルの挿入形態でなされるしかない。このように物理的意味の捺印ではなく捺印され た状態を技術的に作り出す行為も「捺印」と見られるか否かが解釈上問題になる。しかし捺印イメージファイルが簡単 な操作だけで削除が可能だという点で偽造の危険があるにもかかわらず「捺印」の概念には電子文書にイメージファイ ルを挿入する行為も含まれると解釈することが妥当だと 11 キム·ヒョンソク、「遺言方式の改正方向」、家族法研究第33 巻1号(2019)、123 頁
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