【質問3】 賃借人が建物の引渡しという対抗要件を満たしただけで、敷金返還債権自体に競売代金 から優先的に配当を受ける権利を直接与える制度は、日本の制度では設けられていませ ん。賃借権を登記することによっても、その権利は対抗力を得るに留まり、敷金返還債権 に優先弁済権が付与されるわけではありません。 日本における敷金返還に関する賃借人保護の要諦は、優先弁済権ではなく、借地借家法 第 31 条に定める「対抗力」と民法 605 条の 2 に定める「地位の承継」の仕組みにありま す。 具体的には、賃借人が建物の引渡しを受けていれば、賃借権の登記がなくても、その賃 借権を新たな所有者を含む第三者に対して対抗できます(借地借家法第31 条第1 項)。こ の対抗要件を備えている場合、賃借不動産が譲渡され、所有権が譲受人に移転したとして も、その譲受人は当然に賃貸人たる地位を承継します(民法 605 条の 2 第1項)。旧賃貸 人が負っていた敷金返還義務が新所有者たる譲受人に移転することも明文化されています (民法第605 条の2第4項)。これは、所有権譲渡の原因が競売である場合も変わりませ ん。 したがって、賃借人は競売後も退去することなく居住を継続でき、最終的に賃貸借契約 が期間満了や解約によって終了する際、新所有者に対して、預けた敷金の返還を請求する 権利を有します。 【質問4】 ご質問事項について、発表者の意見を述べさせていただきます。 かつて発表者自身、家賃滞納による建物明け渡し請求訴訟の代理業務を多く手掛けてい ましたが、発表で述べた執行代理権の関係で、その依頼者からの業務をすべて弁護士が行 うようになってしまったという経験があります。 訴訟代理によって権利が認められても、それを実現するための強制執行ができなければ 司法書士のサービスは不十分とも言われかねません。このような経験から、筆者は個人的 には司法書士への執行代理権の付与を強く求めています。 ただし、司法書士としてどのような権限が欲しいかという点については、扱っている分 野によって意見が異なります。建物明け渡し請求訴訟を扱う司法書士は執行代理権を求め ますが、消費者分野を扱う司法書士は弁護士に認められている照会制度を求めています。 相続や成年後見といった家事事件を多く扱う司法書士は家事代理権を強く求めています。 いずれにせよ、裁判分野での権限を強化できれば、国民の利便性の確保に資すると考えて います。 一方で、司法書士が「ミニ弁護士化」を目指すのは、また違うと考えております。司法 書士は、裁判以外の分野、例えば登記や後見業務などでは、当事者の間に立ち、中立的 に、双方の立場に立って仕事を行っているという特徴があります。これは、一方に肩入れ
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